「がんの予防には野菜スープを食べるのが一番」と断言できる

 

 食欲減退やおう吐、脱毛などのつらい副作用を伴います。私が開発を目指しているのは、正常細胞を傷つけず、がん組織だけに作用を集中させる抗がん剤です。

 

 もちろん、いかに治療が進歩しようとも、がんは予防が一番たいせつです。私の本業は抗がん剤の研究ですが、がん予防の研究も行っています。その研究から、「がん予防の食事には野菜が一番」という結論に達しました。以下に、その理由を説明しましょう。

 

 なぜ植物はがんにならないのか

 

 皮膚がんの主たる原因は紫外線です。長期に紫外線を浴びると、体内で、猛毒となる活性酸素が発生し続けます。活性酸素はがんの元凶です。活性酸素は遺伝子を酸化させて損傷を与え、正常細胞をがん細胞に変異させます。皮膚細胞が変異すると、皮膚がんが発症します。

 

 私は、マウスの皮膚がんを調べるうち、1つの疑問が浮かびました。

 

「植物は、なぜがんにならないのだろう?」

 

 植物は一年中、紫外線を浴び、活性酸素の猛攻を受けていますが、がんにかかりません。私は、この謎を解こうと研究を進め、植物に大量に含まれるファイトケミカルにがん予防効果があることを突きとめました。

 

 ファイトケミカルは、植物が紫外線や害虫などから自らを守るために作り出す化学物質の総称で、植物の色素や香り、苦味などを構成している成分です。

 

 緑茶のカテキン、トマトのリコピン、ホウレンソウのルテイン、ニンジンやカボチャのカロテノイドなど、ファイトケミカルは身近な野菜にたっぷり含まれています。

 

 ファイトケミカルの特長は、活性酸素を消去する強力な抗酸化作用があることです。植物はファイトケミカルを内蔵しているおかげで、夏の太陽光の強い紫外線を浴びても活性酸素を消去でき、がんにかからないというわけです。

 

 がん予防の最善策は野菜のファイトケミカルの摂取

 

 私たち人間の生活には、紫外線のほかにも、食品添加物などの化学合成物質、タバコ、公害物質、多量の飲酒、ストレスなど、活性酸素の発生源があふれています。ウイルス感染やストレス、呼吸で取り込んだ酸素も、活性酸素を発生させます。

 

 実は、人間の体にも、活性酸素を消去する抗酸化物質を作り出す働きが備わっています。問題は、この働きが年齢とともに低下し、活性酸素に対応しきれなくなることです。

 

 そこで頼りになるのが、植物に含まれるファイトケミカルです。日頃から野菜をしっかり食べ、野菜のファイトケミカルを摂取することががん予防の最善策なのです。

 

 野菜を食べる人ほどがんにならない

 

 野菜を病気予防に活用する動きは世界的な広がりを見せ、米国の科学雑誌の『サイエンス』は、「野菜はすごい」という特集を組み、野菜を食べて病気を予防する「ファイト・セラピー」を提唱しています。

 

 米国では、がんの死亡率に関して原因の第3位である大腸・直腸がんが、ニューヨークやマサチューセッツなど東部の6州で、2000年から8年ほどで激減しました。一方、ミシシッピやアラバマなど南部の州の低下率はわずかでした(次のグラフ参照)。

 

 病気予防を目的に米国では、1991年から1日に緑黄色野菜を5皿食べるキャンペーンがスタートしました。野菜の摂取量は南部では横ばいですが、東部の諸州では増えています。このことが大腸がんの死亡率が低下した理由の1つではないかと私は考えています。野菜の抗酸化力によってがんの発生が抑えられたということです。

 

 また、1995年、がん研究者の間で最も評価の高いアメリカの癌がん学会の機関紙『キャンサー リサーチ』に興味深い論文が掲載されました。

 

 台湾におけるB型肝炎ウイルスのキャリア(保菌者)を8〜10年間、追跡調査した研究です。内容は、肝炎ウイルスのキャリアで野菜の摂取が週平均6回以上の人は、それ以下の人よりも、肝がんの発生率が4・7倍も少なかったというものです。これはキャリアの人にとっては大きな朗報です。

 

 このほかにも野菜の効用についての研究は国内外で進み、私は「野菜はがん予防に有効だ」と言い切っても差し支えないと思っています。

 

 ただし、野菜の効果を最大限に得るには摂取法が重要です。私が行った研究では、がん予防には野菜スープがベストという結果が出ています。

 

サラダより野菜スープは抗酸化力が10倍から100倍も強い

 

 生の野菜を食べると有効成分は未消化のまま排泄

 

 一般に「生野菜は健康にいい」というイメージが根強く、野菜はサラダで食べるという人が多いと思います。しかし、生の野菜をそのまま食べても、ファイトケミカルはわずかしか吸収することができません。

 

 ファイトケミカルの多くは、野菜の細胞の中にあります。細胞は、セルロースという食物繊維の一種でできた頑丈な細胞壁に包まれています。ファイトケミカルを取り出すには、細胞壁を壊さなくてはなりませんが、人間の体内では、セルロースを消化できません。野菜を噛かんだり、包丁で刻んだりした程度では大半の細胞壁は壊れず、細胞の中の有効成分を吸収できないのです。