治験体験

 

当時20歳。専門学校を卒業後、夢と希望に包まれ就職した会社にて、ものの見事に社会の厳しさに負け、逃げるように会社を辞めた私はとりあえず生活する金が必要だった。

 

実家を離れ一人暮らしをしていたため、日々をそれとなくやり過ごしているだけでも当然金は減っていく。

 

パソコンも持っていなかった私は、ガラケーでひたすら

 

(高収入)

 

(楽なアルバイト)

 

といかにもダメ人間が検索するワードランキング上位を占めるに違いない単語を入力し、

 

アルバイト求人をスクロールしていた。

 

そこで目にとまったのが治験アルバイトである。

 



治験アルバイトは一般的なアルバイトの求人等のホームページには基本記載されていない。

 

ネットサーフィンをしているうちに治験アルバイトの求人へたどり着いたのである。

 

噂には聞いた事があったが正直この頃は治験に対してあまり良いイメージは持っていなかった。

 

どちらかと言えば少し危ないアルバイトのようなイメージだ。

 

まだ世に出回っていない新薬を投与され、それなりの報酬を貰う。

 

知識やスキル等も必要なく、簡単に大きな金が手に入る。

 

当時の私にはそれくらいの浅はかな知識しかなかった。

 

今思えば、携帯に映る報酬額しか目に入っていなかったのかもしれない。

 

こうして登録フォームへ進み私の初めての治験アルバイトが始まるのであった…

 

第二章 治験アルバイトへの道

 

簡単に治験アルバイトを受けるための流れを説明しよう。

 

治験は全国、いや世界で多数行われているため、治験を扱っている機関自体も相当数ある。

 

病院に直接問い合わせて行っている治験を調べる事も出来るが、一般的には仲介サイトへ登録するのがベターだ。

 

時間が限られている人や、疾患持ちの人の場合は自身の都合にあった治験を多く実施している仲介サイトに登録すると良いだろう。

 

サイト上で登録を済ませてもまだ仮登録の状態となる。

 

一般的に治験に参加する前には登録説明会へ参加しなければならない。

 

説明会では治験の概要や、健康上のリスク等を説明してくれる。

 

また、この説明会に参加したからといって必ず治験に参加しなければならない訳ではない。

 

そして説明会を終えて本登録となる訳だ。

 

本登録を終えると登録したサイトのホームページより実施予定の治験へ予約を行い、次に事前検診を行う。

 

この事前検診が普通のアルバイトでいう〈面接〉である。

 

実際この事前検診で行うのは健康診断と捉えて良いだろう。

 

特に問題がなければそれから数日後に、【登録した治験に参加出来ます】

 

といういわゆる合否連絡がくる。

 

ここまで完了し晴れて治験へと参加出来る訳だ。

 

第三章 いざゆかん治験の世界

 

@行くまでの道のり

 

無事に登録を済ませた私は当日の待ち合い場所へと向かった。

 

場所は二階建ての少し古くさい医療施設である。

 

外観はこれといった特長は無く、昔に小さな病院でも経営していたかのような面影があった。

 

ちなみに今回の日程は2泊3日を計3回行うものである。

 

治験アルバイトには通院タイプと入院タイプの2種類がある。

 

当時時間に余裕があった私は単発の治験アルバイトよりも、宿泊を伴うものを数回に渡って行うものの方が断然報酬額が高かったため、後者を選んだ。

 

通院タイプと入院タイプどちらを選ぶかは、治験の内容を確認した上で自身の都合に合わせて選ぶと良いだろう。

 

当時入院タイプの治験アルバイトは平日に行っている事がほとんどだったため、サラリーマンなどは参加が難しい傾向に合ったが、今では週末に行っているものもちらほらと見る。

 

補足だが、先ほど説明した事前検診は通院タイプの治験アルバイトだとまず必要ない。

 

逆に入院タイプの治験アルバイトは、ほぼほぼあると思ってもらっていただきたい。

 

A着いたそこには・・・

 

待ち合わせ場所である施設の入り口へ到着すると10名弱の男性がいた。

 

年齢層は20代?50代。大きなリュックを背負い迷彩の上着を着ているワイルド風な若者男性。

 

色落ちが激しいYシャツに頭が少し淋しい40前半の男性。

 

タイトで綺麗目な格好をしている女性受けが良さそうな20代後半の男性。

 

なんだか思っていたのと違って私は少々面を食らった。

 

甚だ偏見ではあるが、誤解を招く事を承知の上で言う。

 

治験のアルバイトなど、もう人生を諦めている様な人間しか来ないと思っていた。

 

とりあえず今を生き抜く為に、その場しのぎのために金が欲しい人間しか来ないと思っていた。

 

実際私がそうだったから。

 

ただそれらの私の妄想は、待ち合わせ場所にいた彼らの第一印象で少しばかり覆されたのである。

 

彼らは皆、目力があったし私なんかよりも生き生きとしていた。

 

まだ会話すらしていない彼らに対し、私は少し負い目を感じていた。

 

そして後々、私は治験に対して全くの無知であったと言う事を知る事になる。

 

私を含めた男性諸君が列をなして施設の二階へと進んで行く。

 

ここで各々受付を済ませる。

 

事前に用意するよう言われていた身分証明者や契約書への印鑑の押印。

 

そしてここでも身長測定や体重測定等の簡単な検診が行われた。

 

この簡単な検診は毎回入院初日に行われる。

 

各自受付が終わると、受付の女性が少し大きな声で全員に向かって1日のスケジュール等や生活ルールを最終確認として説明してくれた。